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遠能神(とおのす)さん

 明治のはじめごろのお話です。
 そのころ、長崎でおそろしい病(やまい)(コレラ)がはやり広がりました。人々はこわくなって、部落をあげて毎日、毎日お経(きょう)をあげました。
 「どうか部落の人が1人でも、このおそろしか病気にかからんごと。」と、一生懸命(いっしょうけんめい)、願(がん)をかけました。
 しかし、香焼でもあちこちで、次々とこの病気にかかり、死ぬ人が出てきました。
 ある時、部落の山の上にあるほこらに、白い長いヒゲをはやした行者(ぎょうじゃ)の姿(すがた)をしたおじいさんが、どこらかともなくやってきました。
 その行者は、手に六角棒(ろっかくぼう)をもっていて、首には鈴(すず)をつけていました。
 行者はその暗(くら)いほこらの中に入り、静かにすわり、おいのりを始めました。
 誰(だれ)もが不思議(ふしぎ)に思い、ほこらを遠まきにしてよく聞いてみると、それはありがたいお経を読んでいる声でした。そのお経は21日間続き、その間、食事も水も一滴(いってき)も口に入れませんでした。



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