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オランダ船を引き揚(あ)げた
喜右衛門(きえもん)さん

 引き揚げるための仕掛(しか)けは、喜右衛門の知恵(ちえ)の見せどころです。
 まず何百本もの柱(はしら)になる木、杉板、長い竹、綱、滑車を用意しました。
 沈(しず)んだエリザ号に喜右衛門の持ち船、西漁丸(せいぎょまる)と弟亀次郎の持ち船西吉丸がくくり付けられ、そしてエリザ号を囲(かこ)むように150そうの小舟が用意されました。
 それぞれの小舟に柱を立て、滑車をとりつけ、エリザ号に仕掛けた大綱をひっぱり
浮かそうというのです。
 とうとうこの仕掛けをもとに、エリザ号をひきあげる時がやってきました。
 陸(りく)の方では、まだかまだかと奉行所の役人たちをはじめ、見物人(けんぶつにん)がいっぱい見守っています。
 喜右衛門は潮(しお)が一番満(み)ちてくる時を待ちました。
 船が浮かびやすい、その時がくるやいなや、喜右衛門の号令(ごうれい)がとびました。
 綱をいっぱいに張り、滑車がすごいスピードで回(まわ)り始めました。
 そして少しずつ、少しずつ海底(かいてい)のエリザ号が海面(かいめん)にゆらり、ゆらりと浮かび上がってきたのです。
 そしてこの時を待っていたとばかり、にわかに沖の方から強い風が吹いてきたのです。
 そこで小舟は帆(ほ)を一斉(いっせい)に張(は)り、風の力で一直線に、オランダ新屋敷(やしき)のある浜へ向かいエリザ号をひいていったのです。



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