天神(てんじん)さんのキツネ
はっと気がついた時には、辰ノ口のけんぎゅう鼻(北西側のつき出たところ)の大きな木の下に座(すわ)っておりました。
そして、持っていたおみやげの「なまもの」は、半分くらい減(へ)っています。どうしてこうなったのか、若者にはさっぱりわかりません。
やっと、訪ねる家にたどりつきその家のおじいさんとおばあさんに、時間のかかったことや、「なまもの」が半分しか残っていなかったことを話しました。
すると、おばあさんは「それは天神さんのキツネにばかされたとやろう」と言いました。
若者は、天神さんにおみやげをそなえることを知らず、そのまま通りすぎたのでバチがあたり、天神さんのキツネにばかされて、何日間もつれまわされたのです。
若者は、そんな話を聞いておそろしくなり、さっそく帰りには、残った魚を、天神さんにそなえたそうです。
そんなことがあってから、部落の人たちは天神さんの下を通るときは、生臭(なまぐさ)いにおいがしないように、「なまもの」には塩をふりかけて通ったそうです。